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時間帯制限摂食

01.

時間帯制限摂食とは

(科学研究費 基盤研究(C) 2019-2021年度 研究課題 19K03374)

ラットを高脂肪の食物や糖分の高い食物など特定の食物(diet)が常に摂取可能な状態で飼育すると肥満になりますが、これを「食物誘発性肥満(diet-induced obesity )」と呼びます。しかし、食物が摂取可能な時間帯をラットの活動期(暗期)の12時間内に制限すると、摂取カロリーは変化しないにもかかわらず、肥満は大幅に緩和されます。これを「時間帯制限摂食(time-restricted feeding)と呼びます。時間帯制限摂食による肥満緩和効果はマウスやラットのげっ歯類だけでなく、人間を対象とした研究でも見出されています。本研究課題では、ラットを対象として時間帯制限摂食に関する研究を実施しています。

02.

研究1の概要 砂糖を摂取する時間帯を制限することの体重増加への効果

【目的】時間帯制限摂食により、総摂取カロリーは変化しないにも関わらず、肥満が大幅に緩和されることが知られている。しかし、現実に人間が全ての食べ物を摂取する時間を活動期である昼間に制限することは社会生活上、必ずしも容易ではない。もし一般的な食事の時間帯は制限せずに、高脂肪の食物や糖分の高い食物の摂取時間帯のみを制限することでも肥満緩和効果が得られるならば、時間帯制限摂食の応用が容易になる。研究1ではこの可能性を検討した。2019年度から2020年度にまたがる研究1では、ラットが砂糖を摂取する時間帯のみをを制限する効果を検討した。

【方法】全ての条件でラットが栄養のバランスの取れた通常の飼育用飼料を常に摂取可能な状態で個別飼育された。一方、砂糖を摂取する時間帯は制限した。ラットは飼育スペース内にレバーとペレット提示装置が設置された装置で飼育され実験を受けた。装置内の明暗サイクルは12時間ごとに明期と暗期が交替した(13時から1時までを暗期に、1時から13時を明期に設定した)。また、ラットは装置内でレバーを押すことで砂糖ペレット1粒(45mg)を得ることができた。連続強化スケジュールを用い、1回レバーを押すたびに1粒の砂糖ペレットを与えた。全てのラットが60分間の砂糖摂取セッションを1日に4回経験した。ただし、半数(6匹)のラットは、明期に2回(2時と8時)、暗期に2回(14時と20時)であり、砂糖を摂取する時間帯を暗期のみに制限しなかった(非制限群)。残り半数(6匹)のラットは砂糖を摂取する時間帯を4回(14時、17時、20時、23時)とも暗期のみに制限した(制限群)。実験は8週間継続した。

【結果】飼育用飼料の摂取量には差がなかった。しかし、非制限群のラットは明期には砂糖ペレットの摂取量が減少し、制限群に比べて少なくなった。総摂取カロリーにおいては、制限群が非制限群よりも多い傾向が見られたが、体重の増加には群間で差がなかった。このことは、砂糖の摂取機会を暗期に制限することで、代謝が相対的に上昇している可能性を示す。ただし、総摂取カロリーの差は少なく、有意な差ではなかったため、この結論はまだ確定的ではない。

 

​本研究の成果は、2020年度の日本動物心理学会第80回大会において発表された。

Aoyama, K. (2020). Effects of time-restricted feeding of sugar on rats’ feeding behavior and body weight gain.

研究2の概要

​【目的】

HP用:動物心2020(鹿児島:時間帯制限摂食)の素材.001.jpeg
03.

研究2の概要 砂糖を摂取する時間帯を活動期にした場合と非活動期にした場合の比較

【目的】2021年度の実験では、ラットが砂糖を摂取する時間を制限する効果を検討した。

【方法】全ての条件でラットが栄養のバランスの取れた通常の飼育用飼料を常に摂取可能な状態で個別飼育された。ラットは飼育スペース内にレバーとペレット提示装置が設置された装置内で飼育され、実験を受けた。装置内の明暗サイクルは12時間ごとに交替した。また、ラットはレバーを押すことで1粒45mgの砂糖ペレットを得ることができた。連続強化スケジュールにより1回レバーを押すたびに1粒の砂糖ペレットが提示された。全てのラットが60分間の砂糖摂取セッションを1日に1回経験した。ただし、半数(8匹)のラットは、暗期から明期に変化した2時間後から(明期群)、残り半数(8匹)のラットは明期から暗期に変化した2時間後から砂糖摂取セッションを実施した(暗期群)。実験は3週間実施した。

【結果】

実験の結果、砂糖摂取セッションでの砂糖ペレットの摂取量は、暗期群が明期群より多かった。飼育用飼料の摂取量には差がなかった。そして、総摂取カロリーにおいては差がなかった。ただし体重の増加は、明期群の方が暗期群よりも多かった。つまり、非活動期である明期にのみ砂糖を与えられると、暗期にのみ与えられる場合よりも体重の増加は激しいことがわかった。

この結果は、全ての食物について摂取可能な時間帯を制限した場合だけでなく、カロリーと嗜好性の高い食物の摂取時間帯を制限するのみでも食物誘発性肥満を緩和できる可能性を示唆している。

HP用2021 研究2.001.jpeg
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